石井市長の「てくて句 歳時記」

今月の一句!

水澄むや 越水城に 天下見る
西宮市長 石井 登志郎
廣田神社から南西方向の小高い丘の、現在大社小学校が立つ地には、戦国時代に本格的な城郭建築を備えた越水城がありました。この地は、1351年に足利尊氏が陣所を構えたとされ、1519年に瓦林正頼によって築城され、天下人とも言われた武将・三好長慶が居城としました。
三好一族は今の徳島県にあたる阿波出身ですが、三好長慶は1560年頃には畿内五国にまで勢力を広げ、京の都をも掌握しました。その長慶が越水城を当初居城としたのは、阿波を背後にしながら、京都だけでなく商都の堺を手中に収めるために最適と考えたからでしょう。
「越水」の名は「小清水」からきており、水がこんこんと湧く、生活に不可欠な水が豊かな地でもあったそうです。城は現在の「城山」「桜谷町」「満池谷町」「清水町」にわたっていたとされ、相当大きな城だったようです。
長慶亡き後、三好家は衰退し、越水城は役割を終えますが、今も「城山」という地名が残っているのは、越水城の名残です。
長慶は、歌や茶にも理解ある文化人であったともいわれています。甲山や西宮の海を見渡しながら、この地で文化をたしなみつつ、天下を見据えていたのでしょう。
